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仕事の使命。漆工房を訪ねて…

こんにちは。

先日、漆の勉強に行って参りました。

今回伺ったのは町田にある漆工房、株式会社Ducoさん。
設立者である渡邉さんは幼少期を海外で過ごすことが多く、
海外に持っていくと割れてしまう漆器を常に目にしていたことが
「修復師」の仕事に興味を持つきっかけに繋がったそうです。
大学を出て外為の仕事に携わった後、
福井県に渡り、塗師大久保隆三氏の師事の元で漆について学びます。
輪島や木曽を廻り、修理専門の工房「NADESYCCO」を創設。
その後大学院を卒業し、今の町田に工房を移しました。
チタンやガラスに漆を塗る技法を開発し、
日本に留まらず海外でも数々の個展を開催。世界的に活躍されている方です。
そんな渡邉さんから漆の不思議な性質(まるで生き物の様なんです)と共に
漆の基本的な塗り方を教わり、ご自身の生き方についてもお話を伺いました。

漆は生きているので木などに塗るときも空気穴によく入ります。
両面交互に塗り重ね、目止めをし、本塗りにやっと入れます。
20℃~30℃、湿度は65~70%以内という厳しい条件が揃うと次第に乾きます。
生漆では3~4時間、漆で8~12時間が必要です。

漆の木から採取できる漆は化学塗料とは異なり
自然の優雅さが表現でき、再生や修復も可能。
接着効果も高く様々なことに応用が効きます。
何代も大切に受け継ぐことができるのです。
渡邉さんは「一つなにか完成度の高いものを
突き詰められると生き方や人生が見えてくる。」とおっしゃいます。
物を通して付加価値を提案するのが仕事。
渡邉さんにとってその付加価値とは「文化」。
日本の文化を繋ぎ、後継者に伝え、海外に積極的に
発信されています。
そんな中で色々な人と出会い、様々な文化に触れ、
まだまだ新しい発見があるそうです。
例えば日本の「漆黒」という色。
漆に小針を一本落とし、反応させたものを塗り重ねると
表現できるこの黒は日本独特の「透ける黒」なのです。
日本人は見慣れている為、気に留める方は少ないそうですが
特にヨーロッパでは目を見開いて驚かれるのだそうです。
光によって表情の変わるのも生き物である漆の特徴です。
(赤は光を通し、青い光は通していません。)

自然のもの、生き物と仕事をしていると思わぬことに日々発見の連続です。
トレカーサでも、この漆を住宅のどこかに応用できないだろうかと模索中…
汚れに強く、使えば使うほどに艶の増す美しい漆!
住宅の一部にそんな空間があると、愛着も増して素敵ではないですか?


設計 fujisawa