vol.16

フリーペーパー花鳥風月

INTERVIEW 1

自然と共に、

『本当の豊かさ』のある生き方

-『廃材エコヴィレッジ』傍嶋飛龍さん

-『mossrock山』石毛了一さん
 

INTERVIEW 2

座談会~を語る会~

-参加者 株式会社トレカーサ工事社員

 

■自然素材工房のお宅訪問

命を守る、日本の家

INTERVIEW 1 自然と共に、『本当の豊かさ』のある生き方

 

廃材エコビレッジ

 

山々を分け入った先にある隠れ里、綱子。

そこには常識に捕らわれず

自らの五感で感じ考え

湧き上がる心の熱で命を燃やし生きる人達がいました。

 

綱子の自然、人、

コミュニティの中に感じる『本当の豊かさ』

『豊かさ』は自らの心が感じるもの。

たった1つしかない命を『心豊か』に生きる鍵は、

自分の心にありました。

 

 

神奈川県の北西端に位置している綱子(旧藤野町)。豊かな自然がある旧藤野町には戦時中から現在まで続く芸術家の移住文化があります。旧藤野町(以後、藤野)の限界集落である綱子には若者が移り住み、新たな暮らし方の模索をしています。人里離れた限界集落だからこそ感じる地球の生命や人の息吹、藤野が独自に育んできた『人の幸せ』が中心にある地域社会。それらの出会いが、「本当の豊かさ」がある人の生き方を育んでいます。

傍嶋飛龍

人と自然環境。その関係は切っても切れず、人の存在自体とも関わっています。「人間社会と自然界、本当は一緒なんだけど人間が勝手に違うものをつくり上げている。自然の中でとんぼが飛んでたり、カマキリが虫を食べてたり、そのカマキリが子どもをつくって循環していく。ありふれた生と死、生命の物語。これが世界の中心なんだ本来は」と傍嶋飛龍さん。傍嶋さんは芸術家として作品を生み出しながら、廃工場を廃材でリノベーションし、自然と共生する仕様の廃材エコヴィレッジ(※1)をつくっています。

傍嶋飛龍

「自由な生き方の表現として考えを打ち出していかないとお金の奴隷になっちゃうとこもあるから、廃材を使ったり、自給エネルギーを利用したりしている」。傍嶋さんの考えの中心は自由に楽しんで生きれるかどうか。それが行動の指標になっています。

ツリーハウス

綱子の山中にはワークショップで作り上げた『ツリーハウス』があります。その山の持ち主であり、ツリーハウスビルダーである石毛了一さんは「森を蘇らせたい。山の蘇りを堅苦しくなく、楽しみながらできたら最高。気軽に入れるようになる森が日本中いたるところにあったらいいな」という理想があります。その実現のため、子どもも女性も参加できる間伐『きらめ樹間伐(※2)」で山の蘇りを計りつつ、ツリーハウスをつくることで森を楽しめ、誰もが森を身近に感じる場(mossrock山)づくりをされています。

『人の幸せ』が中心にあるコミュニティ

藤野廃材エコビレッジ

傍嶋さんと石毛さんの常識に捕らわれない自分軸のある生き方は藤野のコミュニティからも刺激を受けています。藤野が育んできたコミュニティとはどんなものかお聞きしました。
レジェンドと呼ばれる団塊の世代移住者によるイベント会議での話。

傍嶋さん 「会議ってまじめにするのが当たり前かな思ってたら、お酒飲みながら、酒のこと語ったり、ずっと落書きしてたり、ギター弾いてる人も。みんな好き勝手してて全然会議になってなくて、ここはコドモ部屋か!って感じで。『今日は決まったこと無いネー。テーマだけ決めよっか』と言ってテーマの話からまた脱線し出したり」

綱子

(質問:どうやって形にしていくんですか?)
廃材エコヴィレッジのメンバー加藤亜季子さん 「友達とか家族ってそれぞれいつものように過ごしているんだけど、『ここだけはこうしない?』っていうのが出てくる。そんな感じで話が進んでいくんです」。飾らない間柄だからできる信頼関係もあります。

石毛了一

傍嶋さん 「人と人が楽しさで繋がってる。楽しいっていうのが大事な心のエネルギー源。その楽しさがあったからつなごもりく(※3)は18年も続けられた。先人は大本でエネルギーが大事ってのを伝えてくれてた。移住者同士はイベントの企画開催を通して繋がり、外からイベントに遊びに来た人がこの街おもしろそうって移り住み、共に面白いことを構想してアクションを起こしている。人間引力が藤野に人を引きつけ、いつも何か巻き起こっている、それが藤野だなぁって15年住んでそう思う」。藤野の繋がりはお金でも組織でも無く、自らの意思で繋がったコミュニティ。

廃材エコビレッジ

施設やお店の少ない田舎では、人々の助け合いが必要です。石毛さん「地域通貨の“よろず”(※4)も困ってる人を助けるシステム。コミュニケーションの手段になっている。」顔が見える地域を限定すれば、お金というものを媒介しなくても助け合い共に生きていくこともできます。“よろず”はそんな共存の思いも流通し、循環していきます。さらに地域通貨は既存の紙幣価値に縛られない新しい価値を認め、地域で活かすことができるのも利点です。

廃材エコビレッジ

そんな藤野が独自に育んできた『人の幸せ』が中心にあるコミュニティ。そのコミュニティに刺激を受けながら傍嶋さんや石毛さんは人として本当にやりたいことを日々チャレンジしています。

人間としての自然体さがある生き方

廃材エコビレッジ

「綱子は綱子らしいコミュニティの形があっていい。廃材エコヴィレッジは建物を建てることから人が関わって、それぞれが『この柱は俺が建てたんだ』って感じでアイデンティティを持ちながらみんなで創っていく。それもコミュニティかなぁ。地域の人も関わりながら、老若男女問わず混じり合える場になっていけばおもしろい。藤野はお店が少ない。それなら自分たちでつくって楽しもうと思って創ってる。」

石毛了一

傍嶋さんはリノベーションの仕事経験は無く、「気持ちで動き出して、動き続けてる。我慢してやってると思考停止してしまうけど、湧き上がる興味から探究し続けることによって可能性を見出して目的に近づいていく。探究してると沢山の思いこみに気付かされ、その不自由な捕らわれから自由になればなるほど可能性も多様になる」。効率の悪さなどマイナスイメージのことも、自分の意志で選択したものであれば、人生の学びに繋げることができます。「自営がやりたくてやってみて、大変って解って、雇われるのが楽だと感じて幸せに働けるってこともある。マイナスな事もこの人の人生にとったら必要な経験ってこともあるよね」。

廃材エコビレッジ

傍嶋さんの生き方、「自分の捕らわれからどんどん自由になり、その境地に人間としての自然体さっていうのが出てくる。それは子どもの自由な無垢さと違った老人の熟成した無垢さ。それを得ていきたい。俺は人生かけて全力でそれを見せてって何かを感じる人がいればいいかな」。

みんなが楽しく自由な社会

廃材エコビレッジ

「『今月これにお金を使うから、この分だけ労働に費やさなきゃいけない』そんな労働に費やさなきゃいけない時間が減れば減るほど自分にとって自由の時間が増えると思うんだよね。」やりたいことを我慢して妄信的に世間の一員となって暮らすことで、世間の紙幣価値に必要以上に縛られ不自由になることも。世間一般という『意識』で守りに入ると、失われるアイデンティティもあります。

万華鏡

「大人になるうちに情報に捕らわれていく。ビルディングに囲まれてたら息つく暇がない。自然の中に行けば行くほど人間のそういうのは薄れていく。田舎暮らしをしている人達はお金がない人も多いけど、生きるゆとりの持ち方を知ってる。緑が解放してくれるのもある。守っていても精神が未熟なまま。もっと好きなことして自分の世界観を広げた方が心豊かに暮らせると思う。豊かさって金じゃないと思うから、俺は仲間たちで楽しい時間を共有できてたら、最高に豊かなことじゃないかなって。その活動の場として廃材エコヴィレッジを使っていきたい。」

廃材エコビレッジ

大人の意識の捕らわれは子どもにも影響します。
加藤亜季子さん 「親が『成功するよう頑張りなさい』じゃなくて、やりたいなら失敗してもいい、どんどんやりなさいって言えれば子どももやれると思うし、その方が抑圧無く、精神が健全に育つと思う。」
傍嶋さん 「みんなが楽しい社会を創ろうと思えば楽しい社会はできる。大人こそ捕らわれから解放されれば、子どもに自由を与えられる」。

廃材エコビレッジ

「現代の流通スタイルは様々な場所での生活を可能にしてる。昔はもっときびしい村社会だったりして、よそ者が入っていきにくかったけど、現代は田舎にゲストハウスも色んな所にできたり、入りやすい環境になってる。藤野なんかはその先駆け。空き家も安くなってきてるし、気持ちで動けば自分の好きなライフスタイルを創りやすい環境になってきてる。ポジティブな面も多いよね」。

だれもが気軽に入れる森づくり

廃材エコビレッジ

傍嶋さんの音楽サークル仲間でもある石毛さん。山好きから山主になり石毛さんが抱くようになった思いとは。「山を持つことによって日本の森に興味が沸き、その現実を知るようになった。国内の人工林は利用されず、手入れされないため荒れ果てているのに、世界中の原生林を伐採し、輸入している。」日本の国土約7割を森林が占める日本。森林との共生無くして日本という環境で暮らすことはできません。しかし、今の日本では自然と関わらずに生活することができ、日常で森林を感じ意識することは少なくなりました。

きらめき間伐

「何にも知らない人がここに遊びに来たことによって森のことを知るというような場所にしたい。ツリーハウスには旅人が求める非現実があると思うんです。」体感から変わる意識もあります。人工的で便利な生活に慣れてしまっている私達。ツリーハウスは人が本来持っている生命の感覚を呼び起こしてくれます。

オリジナルの人生を豊かに生きる

廃材エコビレッジ

傍嶋さん「20代に旅をしながら何年も探して、自分で腑に落ちるとこがあって、迷わず行動できるようになった」。石毛さんも放浪の旅経験者「インドの旅、都会や田舎暮らし。とにかく自分がやりたいなぁと思った事はとりあえずやってみました。行動する事で同じような目標や目的を持った人達と自然に繋がりそこからまた刺激をもらっています。やってきたことすべてが今に繋がっていると最近つくづく思います。」自分軸で環境に触れていくと、人として本当は何をしたいのか見えてきます。与えられた常識や固定概念で心を縛ることなく、自分の心で感じ考え出した決断は、その道が困難だったとしても、自身にとっての学びはより大きく豊かなものになっていきます。
あなたの人生はあなたしか生きることのできないたった1つのもの。その豊かさを感じるかどうかはあなた次第です。