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INTERVIEW 1

松下憲司が語る「本物」とは 自然豚舎 

海老名畜産(有)社長 松下憲司さん

 

相川町有機農業博士 諏訪部さんの

有機菜園レッスン

 

特集 自然素材

シラス

 

PDF:6.78MB(クリックするとPDFデータがご覧頂けます。)

INTERVIEW 1 自然豚舎 海老名畜産(有)社長  松下憲司が語る「本物」とは

松下憲司

松下憲司とは

愛川町で、自然の浄化システムを利用した「自然豚舎」で健康な豚つくりを実践。

 

さらに無添加の加工品も生産販売を自らてがけ、自社の徹底した理念のもと生産~加工~販売し、違いのわかる本物志向のお客様に商品を届けている。

 

プロフィール

養豚業:海老名畜産(有)の社長

 (創業1970年~現在40年目)

豚肉の加工から販売:

 (有)中津ミートの社長

 (創業昭和52年~現在33年目)

神奈川農畜産物供給センター 役員

らでぃっしゅぼーや株式会社の

 Radixの会の副会長

日本農業生産法人協会

神奈川県の幹事(農業法人の組合)

■自然農業協会の幹事

本物の味をつくるシステム

豚肉の生産

松下社長が海老名産畜産を始めたのが今から40年前。

 

後を継ぐ形で養豚業をはじめた松下氏。 松下氏が40年の間に作り上げたのは豚肉の生産~加工~販売のシステム。

 

そして豚の飼育からその商品が消費者の手元の届く所までの工程に、一貫して「本物作り」という共通理念がある。

 

豚の飼育からその商品が消費者の手元に届く所までの工程でひとつ筋が通っているから、本当に本物の味が消費者に提供できるとも言える。

豚

その『本物の味』を提供するためには、「生産~加工~販売」のシステム構築が必要で

■生産部門――

 自然の摂理を生かした養豚方法の確立

■加工部門――

 本物の味をつくる豚肉加工方法の確立

 

などの多角的な分野の確立をし、そして各分野での「本物」のシステム構築をしなければならない。

 

『本物の味』には年月・経験がかかるのである。

 

実は、経営は赤字からのスタート。

それなのに、この苦難の道を乗り越え、このシステムの構築ができたのは、 「本物志向の確かなお客さま」と共に商品開発をしてきたからだと松下氏は言う。

これから「本物の味」をつくるシステムの誕生秘話にせまる。

安心安全なものを作るというのはふつうのこと~企業理念

松下氏

豚肉の生産~加工~販売のシステムに一貫している企業理念は・・ 「食品の新鮮・安全・本物の味」 この企業理念ができたのは、大学時代から抱いていた松下氏の社会への問題意識からである。

それは、松下氏が大学時代に出会った本、有吉佐和子氏の「複合汚染」に感銘をうけ、食の安全性の必要性を痛感したことからはじまった。

そして実際に自分が社会人になり、畜産業者として社会に貢献する立場になったとき、自分がどうすべきか・・・。

その思案の結果、今の理念の原型ができた。

豚たち

松下氏いわく「企業として、ただお金儲けすればいいだけじゃしっかりした理念ではない。

ものづくりをする仕事上、安心安全なものを作りたいというのはふつうのこと。」「食品の新鮮・安全・本物の味」これが企業理念。 さらっとはっきりいう松下氏。

その口調には、信念の強さと苦労の歴史に裏づけされた自信を感じる。

そして企業理念は現在の海老名畜産の自然豚舎や中津ミートの無添加加工食品などとして形をなしている。

これから各分野(養豚・加工)における「本物」づくりに迫る。

「豚の幸せ」~自然界の浄化作用をもった自然豚舎

ソーセージ

創業してから40年。

現在までに作り上げた豚舎のシステム(自然豚舎)は、「自然界のもつ合理性」を信じて創り上げてきたもの。

「自然界のもつ合理性」とは自然界の浄化作用システムのことである。 自然界の浄化システムとは・・・

 

糞尿→豚の餌になるシステム

糞尿は微生物により分解され堆肥(植物の肥料)になる。

→堆肥になった糞尿は植物の栄養となり植物が生長する。

→植物は豚の餌になり豚をつくる。

→豚が糞尿を出す

→最初にもどる。

 

このようにして浄化され循環していくシステム。 この自然の浄化システムは自然界のもつ合理性である。

稲穂

豚舎の環境は、・・・・・・ 床におがくずが分厚く敷き詰められ、豚の足元は森林の大地のようだ。

天窓から陽光が降り注ぎ自然の風が通り抜ける。

広々とした面積の中(一般的な豚舎に比べ1頭につき1.5倍の間隔)、1頭1頭隔離せず、集団飼育されている。

床のおがくずは「自然界の浄化システム」が利用されている。

床の上に落ちた糞尿はおがくずに澄む微生物により分解され、清潔に保たれる。

 人間も豚も同じ、健康的な環境でなければだめなのだ。

 

松下氏いわく「豚の幸せを考えるともっと広くてもいいんだが・・・」 このような本来動物(ブタ)が暮らしていた自然の環境に使い豚舎で海老名畜産のブタは健康的に育てられている。

また、自然の浄化システムがあれば、浄化槽の設備も必要なく経費削減できる、という利点も自然の合理性がなせる業である。 この自然豚舎は8年の年月をかけて作り上げられた。

実験プラントを設置し飼育実験を継続。におい・豚の健康面などを見て、その有効性・問題点などを観察・改良し、やっと現在の自然豚舎になったのだ。

本物志向の「確かなお客さま」と信頼で築き上げた味

豚を持ち上げる

赤字からのスタートだが、苦難の道を乗り越え、本物の味を構築できたのは「確かなお客さま」と共に商品開発をしてきたからだと松下氏は言う。

中津ミートの加工品は「生産者と消費者が手をつなぐ会」の方々と一緒に無添加商品をつくりあげてきた。

食品添加物など消費者の目線から「体に害のあるもの」と思われるものは使用しないという開発方針。

 

商品開発の試行錯誤の中、「伝統の加工技術」は化学調味料を使わず、天然のものだけをつかって肉の保存をしてきた人間の知恵の蓄積。

だから安心・安全・本物は「自然の恵み」と「伝統の加工技術」の中から生まれると気づいた。 その結果、天然素材の調味料を使った伝統的な加工方法で「本物の味」を作り出すことに成功した。

そのために、ヨーロッパのハム・ソーセージの伝統的な技術なども学び、科学薬品を使わずに作る製法を確立した。

結果「伝統の味」を中津ミートで再現することとなった。 本物の味を作り上げるなかで、葛藤も生まれることがある。

 

一般に生ハムをつくるとき発色剤の亜硫酸ナトリウムが使われる。 昔ながらの生ハムの伝統製法も化学合成ではない天然素材の硝石(亜硫酸ナトリウム)を使う。

しかし発色剤は食品添加物であり、食品添加物を無添加でものづくりをしてきた中津ミートでは現在発色剤の添加は行っていない。

しかし、人間の歴史として天然素材の硝石を使って肉を保存してきた事実があり、それは伝統の「本物づくり」の手法といえる。

伝統の「本物づくり」と「安全なものづくり」は必ずしもイコールにならない。

その葛藤が「本物づくり」にはあるのだ

 

(亜硫酸ナトリウムの効果・・・・殺菌効果・発色効果・消臭効果・スパイスのフレーバー引き出す)

これから社会にどんな食を提供したいか

これから食をおぼえる子供たちに「本物」の味を知ってほしい。そんな思いが松下氏にはある。
現代の子供たちは化学調味料の味を肉の味だと思って育っている。
現代のハム・ソーセージなどはほとんどが合成添加物で味付けをされているからだ。

合成添加物で味付けされた肉を肉の味として育ち、肉本来の味を知らずに育っていくのは、味覚の成長にも重大な影響を及ぼす。自然界の恵みが生み出す本物の食べ物の味を知ることは、自然界に暮らす人間として重要なことだと松下氏は言う。

豚の幸せを考えて、自然に近い形で健康に育った海老名畜産のブタと自然の恵みと人間の知恵が蓄積された伝統の加工法でできた中津ミートの加工品。

松下氏が作り出すブタの味は自然が生み出したブタの「本物の味」。
この大地で自然に近い形で生きてきたブタの証の味なのだと思う。

松下氏の素顔

松下氏の趣味は田んぼ。日本人の主食であるお米。
それが1993年大冷害のとき日本が米不足になり、外国のお米を食べたとき「おいしくない!」と思い、ないなら自分でつくろう!と始めたのがきっかけ。
そこからお米栽培の難しさを体験するほどに、お米づくりの醍醐味を感じるようになり、米づくりをして17年目。
現在では倒れやすいコシヒカリの栽培が成功できるようになってきた。

お米づくりの堆肥(肥料)には海老名畜産の自然豚舎から出た堆肥を使ってある。豚ぷん(豚の糞を使った堆肥)は窒素肥料分が多いため、お米づくりには向かないと通常言われている。窒素が多いため、お米を倒してしまうからだ。しかし海老名畜産の飼料は天然のものを多品種与えているので、堆肥の肥料成分もバランスがよい。だからコシヒカリの栽培にも利用できるのかもしれない。

自然豚舎の堆肥に興味のある方はこちらへお問い合わせください。↓
海老名畜産(有)
神奈川県愛甲郡相川町 三増1228-1-
電話:046-281-0875

相川町有機農業博士 諏訪部さんの有機畑レッスン

~1月~3月の作業編~

 ■1月~3月作業:防寒                                      

相川町有機農業博士 諏訪部さん

寒い季節、野菜には防寒が必要です。
「根を覆う」という意味のマルチ。
有機栽培の防寒には「有機マルチ」が必要です。
マルチには、「バークマルチ」や「ワラマルチ」「堆肥マルチ」などがあります。
(※堆肥(たいひ)とは・・・有機物を微生物によって分解された肥料のこと。バークとは上記写真参照。)
野菜の種類によって使い分けが必要です。野菜別に紹介していきます。